酒賀神社

 栃本廃寺跡から約3キロメートル南下した山中に、酒賀(すが)神社がある。地名で言うと、鳥取市国府町菅野になる。

酒賀神社参道入口

 酒賀神社は、六国史の一つである「日本三大実録」に記載のある神社で、国史現在社(国史に記載がありながら現存する神社)である。

 祭神は、大巳貴(おおなむち)命と、その妻八上姫(やがみひめ)命、その子大山祇(おおやまづみ)命の三柱である。

 参道に入ってすぐ左にあるご神木が、生命力を感じさせる巨木であった。

ご神木

 酒賀神社の創建の年代は詳らかではないが、社伝によれば、元々は須賀山の麓に坐していたという。

 天平勝宝六年(754年)に社地が須賀山から栃本山に移された。

 天慶元年(938年)に、この地方を大地震が襲い、社殿が倒壊したため、翌天慶二年(939年)に社地を元の須賀山に遷移した。

 元和八年(1622年)に須賀山の山火事により社殿が焼失した。

参道

 寛永元年(1624年)に社殿が再興された。

 天保十三年(1843年)に社地が現在地の菅野山に移され、現在の社殿が完成した。

 鳥居を潜って短い参道を歩いたが、参道の右側に高い杉が連なり、森厳な空気を醸し出していた。

 参道を歩くと、左に石段が見えてくる。

石段

 石段を登ると境内で、拝殿が正面にある。

拝殿

狛犬

拝殿正面

 拝殿は簡素な銅板葺の建物だが、酒賀神社の真骨頂は、この拝殿の奥にある本殿の彫刻である。

 天保年間の彫刻なので、そう古さは感じないが、躍動感溢れる力作である。

本殿

 本殿の屋根は、正面に唐破風と千鳥破風を持つ流造で、屋根を覆う銅板が複雑な流線形になっている。

向拝の彫刻

龍と鷲の彫刻

木鼻の獅子と獏の彫刻

木鼻と手挟みの彫刻

脇障子の彫刻

軒下の彫刻

尾垂木の龍の彫刻

 私が酒賀神社を参拝したときは、周囲には誰もいなかった。それでも常に誰かがいるような気配を感じた。

 これら彫刻群が発する雰囲気だろうか。それとも祭神が見守っておられるのか。

 いずれにしろ、このような人気のない山中で、このような見事な彫刻を拝見して、また一つ心が豊かになった気がした。