西天目瑞巌山高源寺 前編

 11月27日に丹波の史跡巡りを行った。

 最初に訪れたのは、兵庫県丹波市青垣町桧倉(ひくら)にある臨済宗の寺院、西天目瑞巌山高源寺である。

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高源寺

 私が自宅を出た時、播磨地方は晴れていたが、丹波に入ると雨天であった。

 今回で4度目の丹波史跡巡りだが、その内3回は雨に祟られたことになる。いずれの時も、播磨は晴れていたのに丹波は雨というパターンである。

 しかも1日の間に天気が目まぐるしく変わる。丹波の天候は、定めないものである。

 高源寺は、天目楓で有名な寺である。紅葉の時期は過ぎたが、境内には楓や銀杏の落ち葉が散り敷いていて、いい風情だった。

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惣門

 雨が降っていたが、参拝客も多かった。

 高源寺は、正中二年(1325年)に、丹波佐治庄出身の遠谿祖雄禅師が開創した。

 遠谿祖雄禅師は、徳治元年(1306年)に元朝の中国大陸に渡り、杭州天目山にて中峰国師の下で修業した。

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参道の石段

 正和五年(1316年)、遠谿は、中峰国師から付法の印として自賛画像、法衣、鉄如意を授けられて帰国する。

 中峰国師を描いた自賛画像は、今も高源寺に伝わり、絹本著色普応(中峰)国師像として国指定重要文化財となっている。

 遠谿は帰国後10年間筑前の山中で修行するが、正中二年(1325年)に丹波に帰り、この地が杭州天目山に似ていたことから、一宇を建立した。 

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石段上の楓の落ち葉

 嘉暦元年(1326年)、後醍醐天皇から高源寺という寺号を授けられた。

 永正十五年(1518年)には、後柏原天皇の勅願所となる。

 高源寺は、西天目と称されているが、遠谿の同門の業海が開いた甲斐国の栖雲寺が東天目と呼ばれている。

    高源寺には、遠谿が天目山から持ち帰って植えた天目楓が植わっている。

 高源寺は、天正年間(1573~1592年)の明智光秀による丹波攻めで全山焼失する。

 享保年間(1716~1736年)に柏原藩織田家の援助を得て、天巖明啓禅師が伽藍を再建した。

 寛政十一年(1799年)、弘巌禅師が今の伽藍を完成させた。

 雨の降りしきる中、長い参道の石段を登って行く。暫く行くと、山門が見えてくる。

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山門への石段

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山門

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山門の彫刻

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 山門は、別名紫鳳楼と呼ばれ、二階に釈迦如来像と十六羅漢像を祀っている。天井には極彩色の天女や経典が描かれているという。

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山門の裏側

 山門の二階に上がりたかったが、非公開で上がれなかった。

 山門の裏手にイチョウがあり、黄色の落ち葉が一面に広がっていた。

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山門とイチョウの落ち葉

 山門の奥には、高源寺の中心となる仏殿がある。

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仏殿

 仏殿前の石段にもイチョウの落ち葉が広がっている。濡れた石段とイチョウの葉は合うものである。

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仏殿前の石段とイチョウの落ち葉

 石段を上って仏殿を参拝する。

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仏殿

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 仏殿内部は写真撮影禁止だった。

 仏殿には、高源寺開創時から伝わる伝恵心僧都作の釈迦如来坐像と、法衣を着用した後醍醐天皇像、伝小野篁作の如意輪観音像が祀られている。

 静かで凛とした空間であった。

 仏殿の近くに、弘巌禅師が築いた名園心字の池がある。

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心字の池

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 池には、方丈の石垣の上から滾り落ちる滝水が流れ込んでいる。

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石垣から落ちる滝

 紅葉が盛りの時に訪れていたら、さぞかし美しかったろうが、落ち葉が一面に散り敷いている高源寺も良かった。

 ここは花の寺としても著名である。

 四季の移ろいが豊かなこの寺は、参禅修行の好適地だったのだろう。