洲本城跡 その4

 西の丸から本丸跡の石垣下に戻った。

 天守台の艮(北東)の方角に、八王子神社という小さなお社が祀られている。

八王子神社鳥居

 実はこの日、洲本の史跡巡りを始めてから、愛用カメラRX100の調子が悪くなった。    

 通常であれば、シャッターを半押しすれば、オートフォーカスで被写体にピントが合うのだが、この日は電源を入れると、シャッターを押す前に、カメラが勝手にレンズに映った一番手前のものにピントを合わせるようになっていた。しかも一度ピントが合うと変更できなくなっていた。

 気づかないうちに操作ミスをして設定が変わってしまったのかと思い、色々カメラの設定をいじったが、直らなかった。

八王子神社境内の十二支を祀る祠

 これだけなら、単なる操作ミスで設定が変わっただけかと思ったが、カメラを触っている内に望遠機能まで壊れてしまった。これではこの日の史跡巡りでまともな写真が撮れないかも知れないと思った。

 望遠機能が壊れたのなら、被写体に物理的に近づいて撮るしかない。いずれにしろ、今日を最後に、3年間使ったカメラは買い替えなければならないと考えた。

 ところが不思議なことに、八王子神社の鳥居を潜った途端に、カメラの機能が全て元に戻ってしまった。

八王子神社

 操作ミスで設定が狂ったのなら、操作をすることで直る筈である。ところが鳥居を潜っただけで、カメラに触れてもいないのに、いきなり元に戻るというのはいかにも不思議である。

 私は史跡巡りで神社仏閣を参拝した時は、史跡巡りの無事を祈ることにしているが、その願いが八王子神社の神様に通じたのだろうか。

 八王子神社は、祇園精舎の守護神牛頭天王の8人の王子を祀る神社とされている。日本では牛頭天王素戔嗚尊と習合されたので、八王子は素戔嗚尊の8人の子神と同一視されるようになった。

八王子神社

 洲本城跡の八王子神社は、巨岩の中に祀られている。現地で参拝したら分かって頂けると思うが、不思議な霊気のようなものを感じる場所である。

 そして私が八王子神社の社頭に立った時、目の前に大きな蛇が現れた。実は上の写真にその蛇が写り込んでいる。左側の灯篭の下に長い蛇がいる。スマートフォンで当ブログを閲覧している方は、画像を拡大したら確認できるだろう。

 この写真を撮った時は、私はまだ蛇の存在に気づいていなかったが、この後社に近づくと、蛇が正面から私に向かってきて、Uターンしてどこかに消えてしまった。

八王子神社の社

 蛇は神様の使いとされている。私はしばらく前、家の近所のお稲荷さんに参拝して祝詞を上げたり、ミニ四国八十八ヶ所を巡って真言を唱えるなどしていたが、その時もよく蛇に遭遇した。

 ただ八王子神社で出遭った蛇は、今まで遭った蛇の中で最も大きく印象的だった。ここの神様に歓迎されたように感じた。

 私は八王子神社に今後の史跡巡りの無事を祈った。

 さて、洲本城跡には、日月の池を中心とした庭園がある。

日月の池

 この池周辺は、近年になって整備されたものだろう。洲本城跡の中でも、ほっとした気持ちになる場所である。

 本丸跡の東側には、東の丸という曲輪がある。

東の丸

 東の丸の周囲には、石垣が組まれている。曲輪の高さが二段になっていて、二段構えの曲輪と呼ばれている。

東の丸東端の石垣

 東の丸からは、城の北東に広がる洲本港と大阪湾の海景を眺めることが出来る。海からの風が心地よい。

東の丸から眺める洲本の海

 東の丸の東側には、東の丸より一段低い武者溜(むしゃだまり)という広い曲輪がある。

武者溜

 武者溜は、東から攻めてくる敵に備える部隊が駐留した曲輪だろう。

 三熊山の東側斜面は海に迫っている。洲本城跡の最東端に当たる武者溜からは、木々の向こうに広がる海が見える。まるで洲本城跡が、海上に浮かんだ城のように感じる。

武者溜から眺める海

 武者溜からは、東一の門、東二の門という二つの門の跡がある。

 私は、東一の門跡から洲本城跡を出た。

東一の門

 以上四回に渡って洲本城跡を紹介したが、日本200名城の中でも、この城のように海に面した城は珍しいのではないか。

 そして、この城跡を訪れたことで、八王子神社という印象的な場所に参拝することが出来た。

 蛇に神様を感じるのは、思い過ごしかも知れないが、人知を超える何かがこの世にあると考えるのは、楽しいものである。