神呪寺の境内南東側には、展望台があって、そこから大阪の市街を遠望することが出来る。
大阪市街には靄がかかっていて、幻想的な景観であった。
大阪のビル群が靄に包まれている。あそこに沢山の人たちがいる。
こうして見ると、人の世界は小さなものだ。
南の方を見ると、大阪湾と紀伊の山々が見える。
展望台から北に歩く。茶堂という阿弥陀如来を祀った建物がある。
茶堂と言うからには、ここで客に茶菓を供して、大阪平野の風景を見てもらうのだろう。
茶堂から奥に行くと、多宝塔が建っている。
私が史跡巡りで訪れた14番目の多宝塔である。
神呪寺開創1150年を記念して、昭和55年に建てられたものらしい。まだ新しい塔である。
瓦葺で柱や梁が朱色に塗られた華麗な塔である。
多宝塔の内部には、金剛界大日如来が安置されていることだろう。
多宝塔の東側には、小さな祠が並んでいる。手前は甲山稲荷大明神である。
甲山稲荷大明神の隣には、白髭大明神があり、その隣には善女龍王の石の祠がある。
白髭大明神は、猿田彦大神のこととされている。
善女龍王は、雨を降らせる水の神様で、京都神泉苑や高野山金剛峰寺の鎮守とされている。
甲山と神呪寺、廣田神社は、水に関する神々を祀ってある場所である。
今ほど灌漑設備や溜池が整備されていなかった時代の日本人にとって、天から降る雨というものは、生死に直結するほど大事なものであった。
人々が水を得ようと祈りを捧げたのは、当然のことであったと言える。