護国山曹源寺 前編

 岡山市中区円山にある護国山曹源寺は、元禄十一年(1698年)に、岡山藩主池田綱政が、祖父信輝、父光政の菩提を弔うために建てた臨済宗妙心寺派の禅寺である。

 寺院の裏手には、岡山藩第四代藩主綱政から第十二代章政までの歴代藩主やその近親者を葬った、国指定史跡岡山藩主池田家墓所がある。

 曹源寺は、綱政が、家臣上坂外記に命じて造営させ、絶外和尚を開山僧に迎えた。

f:id:sogensyooku:20201016204922j:plain

曹源寺参道

 曹源寺の参道脇には、松並木が続く。この松並木は、岡山県郷土記念物となっている。

f:id:sogensyooku:20201016205326j:plain

曹源寺

f:id:sogensyooku:20201016205547j:plain

総門

 曹源寺は、壮大な伽藍を有しており、境内には池泉回遊式の庭園もある。

 参道から総門、山門、本堂までが一直線に並んでおり、石畳が各建物を繋いでいる。よく整備が行き届いた、美しい寺である。

f:id:sogensyooku:20201016205837j:plain

山門まで続く石畳

 石畳とそれを取り巻く植木が整然としていて、一つの小宇宙を形成しているかのようだ。

f:id:sogensyooku:20201016210110j:plain

山門

 岡山藩が藩主の菩提寺にしただけあって、建物は壮麗だ。山門は、備前国の寺院の山門の中では最大のものだろう。

f:id:sogensyooku:20201016210250j:plain

山門の扁額

f:id:sogensyooku:20201016210335j:plain

山門の柱

 山門を潜って見返ると、黒光りする門に緑の葉が映えて美しい。

f:id:sogensyooku:20201016210640j:plain

裏から見返った山門

f:id:sogensyooku:20201016210723j:plain

山門下の石畳

f:id:sogensyooku:20201016210803j:plain

 この寺院の特徴は、何といっても緻密に組まれた石畳だ。曹源寺の庭園は、岡山藩の大土木工事家、津田永忠が手掛けたものだが、この石畳も恐らく津田永忠が造ったものだろう。

 曹源寺の石畳には、大多府島の元禄防波堤や、閑谷学校石塀など、備前各地に残る津田永忠作の石造物と似通った緻密さと堅牢さを感じる。

 この灰色の緻密な石畳と、緑鮮やかな常緑樹、黒光りする禅寺建築が醸し出す静かで厳かな空気こそ、曹源寺の真骨頂だ。

 山門を潜り、本堂に向かう。

f:id:sogensyooku:20201016211450j:plain

山門から本堂への石畳

 山門から石畳の上を歩くと、壮大な本堂の展望が開ける。本堂は、寺院建築としては、備前第一の建造物だ。

f:id:sogensyooku:20201016211648j:plain

本堂

f:id:sogensyooku:20201016211725j:plain

本堂の扁額

f:id:sogensyooku:20201016211805j:plain

本堂の彫刻

f:id:sogensyooku:20201016211855j:plain

 本堂の周囲の砂地には、箒目が入れられ、枯山水のような景色だ。

f:id:sogensyooku:20201016212637j:plain

砂地の箒目

 曹源寺は、外国からの修行者を数多く受け入れている。

 住職を除けば、他の僧侶は全て外国人で、髪を剃った碧い目の僧侶が、境内を歩いている。

 外国から本物の禅を求めて来日した人が、僧侶となって修行を続けているのだと思われる。

 ここに眠る歴代岡山藩主は、外国からやって来た禅僧が行き交う今の曹源寺を眺めて、さぞや目を白黒させていることだろう。