旧足守藩陣屋跡の北隣に、足守藩木下家の庭園である近水園(おみずえん)がある。
足守川の水を引き入れて造られた、池泉回遊式庭園である。岡山県指定名勝となっている。
作庭された詳細な時期は不詳であるが、18世紀初頭と言われている。
池には、亀島、鶴島という二つの島が造られている。
亀島には、亀頭石、中心石、脚石、亀尾石が配され、上から見ると亀のような姿に見える。
鶴島には、木下利玄の歌碑が建っている。利玄も近水園を訪れて、その風光を愛でたことだろう。
近水園には、池に面して吟風閣という数寄屋造りの建物が建っている。
吟風閣は、第6代目藩主木下㒶定(きんさだ)が、宝永五年(1708年)に仙洞御所を造営した時に、その残材を使って建てたと言われている。
吟風閣は、池に迫り出すように建てられている。1階の回廊の下は、懸造になっている。
吟風閣へは立ち入ることが出来ない。外観だけの見学となった。
茅葺の平屋に2階建ての建物が接続しているような形だ。
2階は雨戸が閉められているが、雨戸を開け放てば、2階からも眺望が利くようになっていることだろう。
池に望んだ部屋からは、庭園全体を見下ろすことが出来る。
歴代藩主は、ここからの眺めを楽しんだことだろう。
吟風閣の1階は、吹き抜けになっている。夏などは風が通って涼しいことだろう。
近水園に隣接して、岡山市立歴史資料館足守文庫があるが、私が訪れた日は閉館していた。
足守文庫は、岡山駅前にある岡山シティミュージアムに吸収統合されつつあるとのことなので、今はもう開いていないのかも知れない。
近水園は、なかなかの名園であると思うが、今では誰でも無料で見学することが出来る。
藩政期に藩主やその家族しか楽しむことが出来なかった庭園を、今では誰でも楽しむことが出来るようになったのは、庭園にとってもいいことだのではないか。