蓮花寺の中興の祖は、「平家物語」の中で閻魔大王のいる冥土に行って帰ってきたと書かれている、慈心房尊恵という僧である。
尊恵が冥土に持って行ったという曼荼羅、経本、数珠は、蓮花寺の寺宝として今も伝わっている。
本尊は、文永八年(1271年)に制作された木造阿弥陀如来坐像で、聖観世音菩薩像と地蔵菩薩像が脇侍として隣に安置されている。
本尊は拝観できなかったが、多くの人を救うために、右手に六本の指を持つ阿弥陀如来坐像であるらしい。
本堂の裏山には、多宝塔が建っているのが見える。
本堂から山に向かって坂道を登っていくと、頭上に多宝塔が見えてくる。
明和二年(1765年)に建立され、文化九年(1812年)に再建された多宝塔である。
私が史跡巡りで訪れた12番目の多宝塔である。
一層目の屋根は瓦葺、二層目の屋根は檜皮葺である。
1階正面は、中央に桟唐戸、両脇に華頭窓を備え、3つの蟇股を有する。
側面は中央に引き戸があり、蟇股は中央に1つのみ、蟇股の両脇には間斗束が備わっている。
背面には戸はない。
形が整った美しい塔だ。
塔の中には、釈迦如来像が祀られているという。
多宝塔には、設計時の墨引板図2枚が残されているらしい。
多宝塔や三重塔、五重塔といった仏塔は、ここに仏さまが祀られているという目印である。
蓮花寺多宝塔は、三田市内で唯一の多宝塔である。
山中の優美な塔を見学して、暫し心が洗われた。