客室の南側には仏間があるが、今は仏壇は撤去されている。
その代わり、旧九鬼家住宅の図面や、九鬼隆範が設計時に使用したと思われる製図道具が展示されている。
建物の南側には、東から順番に、仏間、四畳半、茶の間と和室が続く。
仏間の南側には庭があり、庭に面して縁側があり、庭には蔵がある。
庭に出て建物の南面を見ると、2階のベランダが建物東側の北、東、南を巡っているのが分かる。
このベランダの偉観は、建物を設計した九鬼隆範の最も得意としたところであろう。
縁側を西に歩くと茶の間がある。
茶の間に置かれたちゃぶ台やテレビは、明治というより昭和の風俗を表している。
また、茶の間と8畳和室の間には、2階に登る階段があるが、2階は年数回の特別公開日以外は開いていない。
2階の東半分は洋間になっているが、床に畳を敷き、壁や天井には壁紙ではなく襖紙を張るなど、洋の中に和の要素を入れている。
建物の1階北側には便所があり、竹の格子の小さな窓がある。
2階北側にもベランダは巡り、その上に11月下旬の抜けるような秋空と秋雲があった。
和洋折衷の明治様式の建物を、存分に堪能することが出来た。
こういう建物を見るだけで、いかに明治が希望に満ちた時代だったかが実感できる。