ラインの館

 北野物語館から北野坂を北上すると、東西通りの北野通に至る。ここを右折東進すると、ラインの館が見えてくる。

 北野通は、石畳の歩道が続き、両脇に洋館が並ぶ通りである。

北野通

 幕末の神戸港開港と共に、旧居留地に西洋人が沢山やってきた。明治20年ころから経済的に余裕のある外国人たちは、見晴らしのいい北野地区に住居を建てるようになった。

 それが異人館街の発祥である。北野異人館街は、昭和55年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された。

 北野通の北側の高台に建つのが、ラインの館である。

ラインの館

ラインの館への階段

 ラインの館は愛称で、本来は旧ドレウェル邸という名称である。

 旧ドレウェル邸を建てたドレウェル夫人は、明治4年にフランスから来日した。来日した時は、まだ14歳だった。

 夫人は、明治15年に25歳でドレウェル氏と結婚した。大正4年、夫人58歳の時にこの邸が建てられた。

 夫人は大正9年に亡くなるまでこの邸に住んだ。

ラインの館の門扉

ラインの館

 ラインの館は、木造2階建ての寄棟造りで、桟瓦葺である。外壁は、細長い板を水平に少しづつ重ねた下見板張りである。

 昭和53年、神戸市が旧ドレウェル邸を買い取り、一般公開のための工事を行い、地区内の案内センターとして整備した。

 その際に市民から愛称を募集した。結果、ラインの館という愛称が選ばれた。 

 ラインの館の愛称は、最後の所有者オーバーライン氏の故国ドイツのライン川と、外壁の下見板張りの横線(ライン)の美しさから選ばれたのだそうだ。

ベランダとテラス

建物西側の庭園から

 ラインの館の南側は、2階部分のガラス張りのベランダが張り出し、その下はテラスになっている。
 建物西側には庭園があり、灯篭も置かれている。

建物入口

1階エントランス

 ラインの館は、北野異人館街の案内所のような位置付で、無料で入館できる。
 1階南東の張り出し窓のある間が応接間である。

応接間

 1階南西の間が居間である。その北側は食堂だったが、今は売店になっている。

居間

 赤絨毯が敷かれた階段を登り2階に上がった。

階段

2階

 2階では、3部屋が公開されているが、2階で印象的なのは、やはりベランダである。

ベランダ

ベランダからの眺め

 ベランダから南を望むと、洋館の向こう側に林立するビル群が見える。三宮駅前のビル群だ。

 この洋館が建った大正時代には、高いビルはなく、このベランダから神戸港の景色が見えたことだろう。

 港に臨む洋館。憧れの住居だ。

2階の部屋

 古い洋館には、華やかなところもあれば、どことなく寂しげなところもある。

 かつて遠い異国から海を越えて日本に来た外国人が生活した家である。そんな人たちが抱いた気持ちが、まだ邸の片隅に残っているような気がする。