瑠璃渓 その1

 大山祇神社の参拝を終えて南下し、同じ南丹市園部町大河内にある国指定名勝の瑠璃渓に赴いた。

 瑠璃渓は、園部川が高原の斜面を侵食して出来た約4キロメートルの渓谷である。

瑠璃渓の案内図

瑠璃渓十二勝の図

 瑠璃渓沿いには遊歩道が整備され、歩いて滝や奇岩が連続する景色を満喫することが出来る。

 江戸時代には、歴代園部藩主がここを探勝し、滑(なめら)と称したというが、明治に入って一時途絶えた。

 明治38年船井郡長三宅武彦らが探勝し、瑠璃渓と命名し、名所である瑠璃渓十二勝を定めた。

瑠璃渓の碑

 瑠璃渓十二勝の中で、最も北にあるのが鳴瀑である。瑠璃渓に臨んだ四阿から眺めることが出来る。

鳴瀑

 鳴瀑の裏側は、空洞になっていて、滝が流れ落ちる音が反響する。日本の音風景100選にも選ばれた風景である。

 ここの滝壺には、雨乞いのためお地蔵様が沈められているという古伝説がある。

 鳴瀑のかかる岩の奥には、天女洞という岩の隙間がある。

天女洞

 このように、瑠璃渓の各名所には、漢詩を思わせる名前が付けられている。

 鳴瀑の上には、千秋潭と呼ばれる淵がある。紅葉の時期には、両岸の紅葉が水面に映り、落ち葉が一面に散り敷いたようになるからそう呼ばれている。

千秋潭

 また、この辺りは岩山に囲まれているが、秋になると紅葉が岩山の上に絹の縫い取りをしたように見えるそうだ。

 そのため、この辺りの岩肌は、錦繍巌と呼ばれている。瑠璃渓十二勝の一つだ。

錦繍

 瑠璃渓沿いには京都府道54号線が通っているが、鳴瀑の辺りから54号線を挟んで西側にあるのが瑠璃渓十二勝の一つ、座禅石である。

座禅石

座禅石の上面

 座禅石は、幅6メートル、高さ2メートル、奥行き2メートルの平らな石で、苔むしていて、坐禅をするのに丁度いい石である。

 寛永年間(1624~1644年)に仏頂国師がこの石の上で座禅をしたという。

 ここから約500メートル南下すると、瑠璃渓遊歩道の入口がある。

瑠璃渓遊歩道入口

 ここから、瑠璃渓最奥の通天湖まで遊歩道は続いている。

遊歩道と瑠璃渓の碑

 遊歩道の入口からしばらく歩くと、昭和時代の売店の跡と思われる廃屋が複数見えてくる。昔はここも人通りの多い観光地であったようだ。

 しばらく行くと、快刀巌という岩がある。大きな岩の真ん中が、刀でスパッと切られたように割れていて、その間から松が生えている。

快刀巌

 松の強靭な生命力を感じる。

 歩いてゆくと、小さな滝が所々にある。

小さな滝

 瑠璃渓という名は、渓谷の水が瑠璃のように様々な色に見えることから付けられた名であるという。

 盆のように平らな巨盆巌という岩がある。

巨盆巌

 螮蝀泉(たいとうせん)という滝の水しぶきによって美しい虹が出来るという泉がある。瑠璃渓十二勝の一つである。

螮蝀泉

 日本の国土の大半は山に覆われ、それら山の多くは岩石で出来ている。

 雨がよく降り、標高差のある日本の国土には、美しい渓谷があちこちにある。

 水が豊富にある我が国に生まれたことは、幸せ以外の何物でもなかろう。