城崎温泉

 気比が浜から円山川沿いを南下し、円山川の支流である大谿川沿いに温泉街が続く城崎温泉に入った。

大谿川と城崎温泉の町並み

 大谿川沿いに柳が連なり、その左右に温泉や旅館や店舗が並ぶ城崎温泉の街並みは、いかにも温泉街という風情を持っている。

 大谿川には、弓形をした橋が4つ架かっている。大正14年の北但大地震の後、大谿川の治水工事が行われた。4つの弓形橋は、昭和元年の治水工事に際して架けられたものである。いずれも国登録有形文化財になっている。

弓形橋の一つ、柳湯橋

 また、温泉街の中心にある一の湯の前には、バスがすれ違うことが出来る幅をもつ王橋が架かる。こちらは昭和2年の建築で、国登録有形文化財である。

王橋

王橋欄干

 城崎温泉の歴史は古く、その発見は約1400年前の第34代舒明天皇の御代に遡るという。

 ある人が、一羽のコウノトリがケガをした足を湯に浸して傷を癒しているのを見つけたことにより、発見された温泉だという。

 今、鴻の湯のある場所が、コウノトリが足を癒していた伝説の場所だそうだ。

鴻の湯

 また、天平十年(738年)に温泉寺を開いた道智上人が、曼荼羅千日祈願をしたことにより、温泉が湧き出たという。

 温泉寺の山門の前の薬師公園には、城崎温泉元湯(薬師源泉)がある。今も熱い湯が湯気とともに沸き出ている。

城崎温泉元湯

 泉質は、弱食塩泉で、リウマチ性疾患などに効能があるという。

 道智上人の曼荼羅千日祈願にまつわる、まんだら湯が、薬師公園の近くにある。

まんだら湯

 城崎温泉で有名なのは、外湯(足湯)めぐりである。

足湯

 城崎温泉には、7つの外湯があって、いずれも利用は無料である。浴衣を着て下駄をからころ鳴らしながら、外湯を巡って温泉気分を味わうことが出来る。

 先ほど紹介した鴻の湯とまんだらの湯も、7つの外湯の1つである。

外湯めぐりマップ

 JR城崎温泉駅の前には、平成12年に、7つ目の外湯として城崎町が作ったさとの湯がある。

さとの湯

 さとの湯を過ぎると、そこからは大谿川まで温泉街が続く。

城崎駅前から大谿川までの温泉街

 温泉街は、昔ながらの土産物屋だけでなく、洒落たレストランやカフェ、スイーツの店などもあり、歩くだけで楽しい気分になる。

 街を歩いて認識したのは、外国人観光客が多いということである。

 私が城崎温泉を訪れたのは、午前10時過ぎで、丁度宿泊客がチェックアウトする時間帯であった。

温泉街

 あちこちの旅館の玄関先で、宿の関係者が外国人宿泊客を見送る様子が見て取れた。

 それらの宿の中で、最も古い歴史を持つのが、創業約300年の三木屋である。

三木屋

三木屋玄関

 三木屋は、播磨国三木城主だった別所長治の家臣の子孫が、江戸時代に創業した温泉旅館で、故郷の三木を偲んで三木屋という屋号を付けたという。

 大正2年に、志賀直哉が三木屋の26号室に宿泊して、その時の経験を基に小説「城の崎にて」を執筆した。

三木屋

 三木屋の建物は、リニューアルされているが、基本的に志賀直哉が宿泊した当時と同じ建物で、国登録有形文化財になっている。

 私も一週間ぐらい休暇を取って、城崎に来て三木屋のような古風な旅館に泊まり、外湯めぐりをしたり土地の名産品を食べたりしながら、今後の史跡巡りやブログ執筆の構想を練ったら、さぞゆったりした気分になるだろうと想像した。

 これは夢に過ぎないが、温泉街には夢があるものだ。