細野峠を越えた先の京都府福知山市三和町兎原の集落にあるのが、曹洞宗の寺院、金昌山龍源寺である。
背後の観音山に建っていた百観音堂円通庵を管理していた寺院である。
龍源寺は、寛永ころまでは密教系の寺院だったそうだが、安永八年(1778年)に諸堂悉く焼失し、天明元年(1781年)以降に再建された。
曹洞宗がこの辺りに進出してきたのは、江戸時代初期であったか。
参道の坂道を上ると、階段脇の躑躅が美しく咲いていた。
本堂前には、室町時代に建立された宝篋印塔がある。福知山市有形文化財である。
宝篋印塔の塔身に、梵字ではなく仏像が彫られている。珍しい宝篋印塔だ。
宝篋印塔の奥には、古びたお堂がある。寛政元年(1789年)に建立された阿弥陀堂(旧惣堂)である。
向拝下の虹梁などが鮮やかに彩色されている。
百観音堂は閉まっていて、中の百体観音を拝見することは出来なかった。百観音堂の前に立って手を合わせるのみである。
兎原の集落内を貫通する土師川に架かっているのが、昭和13年に架橋されたコンクリート製橋脚の両橋である。
コンクリートで形成されたアーチが美しい。昭和の名建築物の一つだろう。アーチ橋は合理的な形をしている。
兎原の集落から京都府道97号線を南下し、兵庫県丹波篠山市方面に向かう。
しばらく行った福知山市三和町高杉にあるのが、高杉春日神社である。祭神は、天児屋根命他三柱の春日大明神である。
この神社の現在の本殿は、17世紀後半の建築とされている。
本殿は覆屋で覆われている。この神社の創建がいつ頃かは分からないが、大永五年(1525年)に本殿を再建した際の棟札が残されているという。
丹波には春日神社が多い。奈良の春日大社との所縁が深い地域のようだ。
気が付くと、日は西に傾いていた。日中あれほど降っていた雨もいつの間にか上がっていた。