加茂総社宮

 宇甘渓から岡山県道31号線を走って西進し、岡山県加賀郡吉備中央町加茂市場にある加茂総社宮に参拝した。ここは、備前国の最西端と言っていい場所だ。

加茂総社宮

 加茂総社宮の創建は、永正元年(1504年)のことである。

 この地方の土豪で、後に虎倉城主となった伊賀氏が、旧加茂八郷の総社として建立した。

 境内には、樹齢500~600年の杉や檜の巨木が立っている。加茂総社宮の社叢は、岡山県郷土記念物として保護されている。

杉の巨木

檜の巨木

 下から見上げれば、圧巻の巨木群である。

 祭神は、大己貴(おおなむち)命である。本殿は、江戸時代中期の建物と言われている。

神門

拝殿

唐破風下の彫刻

天狗の鬼瓦

本殿

惣社大明神の扁額

 本殿は、梁間三間、桁行三間、向拝付きの入母屋造りである。美作の中山造の流れを汲んでいるという。

 加茂総社宮では、毎年10月20日に近い日曜日に、岡山県三大奇祭の一つである備前加茂大祭が行われる。

 加茂八郷それぞれの社である日吉神社松尾神社、化気神社、鴨神社、素戔嗚神社、八幡宮、天計神社、三所神社の八社の神輿が加茂総社宮に集まり、社頭で各神社の獅子舞、棒使い、奴ねりなどが行われる。

素戔嗚神社、八幡宮、天計神社、三所神社の神輿を安置する長床

日吉神社松尾神社、化気神社、鴨神社の神輿を安置する長床

 本殿の左右には、大祭の間、八社の神輿を安置する長床という建物がある。

 ここに各神社の神輿が並び、神様に奉納する演技が行われる様子は壮観だろう。

 備前加茂大祭は、約900年前から行われている祭りであるらしい。伊賀氏は、祭りが行われるこの地に、八神社の総社を築いたのだろう。

 本殿を囲む玉垣の中には、二基の仏教関連の石造美術品がある。ここが神仏習合の社だったことを表している。

 一基目は、本殿に向かって右側にある石造地蔵菩薩立像である。

石造地蔵菩薩立像

 花崗岩製の、実に味わいのある石仏だ。判読は出来なかったが、この像には貞治四年(1365年)三月二十九日の銘がある。

 本殿に向かって左側には、総社石燈籠がある。

総社石燈籠

 この石燈籠は、先ほどの地蔵菩薩立像よりも古く、弘安三年(1280年)の銘がある。笠の突端に鎌倉時代の燈籠の特徴があるらしい。

 石造地蔵菩薩立像も、総社石燈籠も、両方岡山県指定文化財である。

 神様を祀る本殿の左右に、二基の仏教関連の石造美術品があるのが興味深い。しかも地蔵菩薩立像と石燈籠の両方とも、この加茂総社宮の創建よりも古い。

 どのような経緯で、この二基の石造物が加茂総社宮に安置されるようになったのか、その由来が知りたいものだ。