大原神社の参拝を終え、一度国道9号線に戻り、更に府道709号線を南下する。
福知山市には、梅田神社が複数祀られている。細見郷の領主だった細見氏の祖先である紀忠通(きのただみち)を祀る神社である。
中出にある梅田神社は、小高い丘の上にある。参道に立つ松の巨木が目立つ。
鳥居を潜り、石段を登ると、広々とした境内に至る。
梅田神社の社殿は、中央に梅田神社本殿、向かって右に摂社春日神社、左に摂社西宮神社が並び、三社の本殿を瓦葺、入母屋造りの覆屋が覆うという、特異な形式である。
覆屋と言えども立派なもので、正面に唐破風が付き、蟇股や木鼻の彫刻が見事である。
また板床の前面には、高欄が巡らされている。
この覆屋の内部に、梅田神社、春日神社、西宮神社の3社の本殿がある。三社とも、京都府登録有形文化財である。
中央に鎮座する梅田神社は、細見氏の祖先紀忠通を祀る社である。一間社流造で杮葺きの屋根を持つ。
ところで、三社の向拝の蟇股の彫刻には、それぞれ異なった動物が彫ってある。彫刻がそれぞれの社の特徴を表していて面白い。
梅田神社の彫刻は、龍と雲であった。
向かって右側の春日神社は、三間社流造で杮葺きの屋根を持つ。
春日神社の祭神は、藤原氏の祖神の天児屋根(あめのこやね)命と比売(ひめ)神、藤原氏の守護神の武甕槌(たけみかづち)命と経津主(ふつぬし)命の四柱である。
四柱の神々を総称して春日大神、春日明神と呼ぶ。
蟇股の彫刻は、春日明神の使いの鹿と紅葉であった。
向かって左にある西宮神社も、三間社流造で杮葺きの屋根を持つ。
西宮神社の祭神は、えびす大神である。釣り竿を持ち、鯛を抱えたふくよかな姿で満面の笑みを浮かべる神様である。
蟇股の彫刻は、えべっさんが抱える鯛と波であった。
これら三社の社殿の彫刻を彫った人物は、同一人物だろう。蟇股の彫刻を見ると、なかなかの遊び心を持った人物だったと分かる。
梅田神社本殿の棟札から、建物の建築年代は貞享五年(1688年)と分かった。覆屋のみ後世に建てられたものだろう。
覆屋の端を歩くと、三社の本殿の背後に回ることが出来る。私が本殿の背後に回ると、黒い生き物が天井から外に向かって飛んで行った。蝙蝠だろう。
三社の本殿の向かって左には、摂社の八幡神社がある。
八幡神社の祭神は、誉田別(ほむだわけ)命である。建物は一間社流造であった。
蟇股の彫刻は、菊であった。
この神社に参拝すると、蟇股の彫刻の遊び心のおかげか、少しほっとした気分になった。
梅田神社の参拝を終えると、日が傾いて、辺りが薄暗くなりかかっていた。