花山院の参拝を終えて北上し、三田市と丹波篠山市の境界付近の三田市永沢寺にある曹洞宗の寺院、青原山永澤(ようたく)寺に赴いた。
永澤寺が開創されたのは、応安年間(1368~1375年)のことである。
四国の四ヶ国と備後の五州の守護職で、室町幕府管領となった細川頼之が、七堂伽藍を整備し、通幻寂霊禅師を迎えて開山した。
この寺は、今では花しょうぶ園があることで有名である。
境内の南側には、東から金鶏門、勅使門、玉兎門が並んでいる。
この3つの門は、昭和40年に再建されたものである。
金鶏門を潜ってまっすぐ北上すると、回廊を通じて庫裏から本堂につながる。
勅使門を潜ってまっすぐ北上すると、仁王門を通って本堂正面に至る。
玉兎門を潜ってまっすぐ北上すると、妙高閣に至る。
私は先ず、勅使門を潜った。門を潜ると左手に椿が咲いていた。
思わず心がほっこりとなる美しさだ。
さて、勅使門を潜って真っ直ぐ歩くと、仁王門がある。
仁王門も、昭和40年に再建されたものである。
この仁王門には、平成14年に制作された二対四尊の永澤寺様式仁王尊が安置されている。
通常の仁王門には、阿形、吽形の一対の仁王尊が安置されている。
仁王尊は、仏教の神々の世界である天部を統率する帝釈天が、武人に変身した姿だとされる。執金剛神とも呼ばれる。
武器を持ち、憤怒の形相をした仁王尊は、仏国土を護っているとされている。
永澤寺仁王門には、二体の執金剛神の裏側に、執金剛神の本来の優しさを表す内心仏二体を安置している。
内心仏は、穏やかな表情の観音菩薩の姿で表現されている。
不動明王の憤怒の形相も、本来の慈悲心が怒りを借りた姿で現れたものとされる。
四体の仁王尊が安置されている仁王門は、日本中で永澤寺しかないだろう。
憤怒の表情を浮かべた執金剛神と優しい表情の内心仏が揃った永澤寺仁王門の二対四尊の仁王尊こそ、仁王尊本来の在り方を示していると思われる。
さて、仁王門を潜ると、目の前に広壮な本堂が現れる。
本堂は、安永七年(1778年)に再建されたものである。
ここで一度金鶏門に戻り、金鶏門から境内に入る。目の前に回廊が現れ、回廊を進むと庫裏につながる。
庫裏は、僧侶が居住する建物である。
庫裏から眺める本堂は、実に堂々として立派である。向拝の彫刻群も見事だ。
本堂の内部は、広々としている。昔から禅僧たちがお勤めをした空間である。
私は礼拝して本堂に足を踏み入れた。