阿毘地神社

 観音寺から西に走り、福知山市興にある阿毘地(あびち)神社を訪れた。

阿毘地神社の社叢

 田んぼの中に、鬱蒼とした林が見えてくる。この林が阿毘地神社の社叢である。

 境内入口は東側にある。

阿毘地神社

 阿毘地神社の創建は、宝亀年間(770~781年)であるという。

 「延喜式」の式内社の一つで、歴史ある古社である。

 祭神は、大日靈貴尊(おおひるめむちのみこと)別名天照大御神である。

 江戸時代には、天日大明神と呼ばれていた。

境内

 境内は、静寂そのものである。

 阿毘地神社は、古くは補陀落山観音寺付近の台地に祀られていたという。いつからこの地に移ったかは分からない。

拝殿

 社頭で二礼二拍手一礼して清々しい気持ちになった。

 社殿を包む木々が、私を見下ろし、私を見守っているように感じる。

 神社に来ると、自分以外に人がいなくても、誰かに見られているような感覚に陥ることがある。

 この神社からも、そういう気配を感じた。

本殿

 本殿は、殆ど装飾のない簡素な一軒社流造である。

 簡素な社殿が、社叢に包まれて存在しているのを見ると、日本の原風景を見る気がする。

 阿毘地神社の周辺は、由良川中流域にあたり、弥生時代中期から鎌倉時代にかけての集落の跡である、興・観音寺遺跡のあった場所である。

興・観音寺遺跡のあった辺り

 観音寺が養老四年(720年)に開創され、阿毘地神社が宝亀年間(770~781年)に創建されたとすれば、8世紀には、この地方の信仰の形は整ったことになる。

 阿毘地神社の社叢は、田に囲まれている。

 川の畔に田んぼと林が広がる風景は、弥生時代から変わらぬ日本の風景であろう。

 日本の地方に行けば、2000年以上続く伝統的景観を、いつでも目にすることが出来るのだ。