大和佐美命神社

 4月9日に因幡の史跡巡りを行った。

 今回紹介するのは、鳥取市中砂見(なかすなみ)字大湯棚と鳥取市上砂見(かみすなみ)にある二座の大和佐美命(おおわさみみこと)神社である。

 先に中砂見の大和佐美命神社を訪れた。

中砂見の大和佐美命神社

 大和佐美命神社の創建は詳らかではない。平安時代の「延喜式」には記載があるという。

 祭神は、国之常立(くにのとこたち)神から伊邪那岐命伊邪那美命までの神代七世の神十二柱と、天照大御神から鵜葺草葺不合(うがやふきあえず)命までの天津神五柱の計十七柱の神様である。

 中砂見の大和佐美命神社は、小高い丘の上に建っている。

石段

境内

 石段や境内は、苔で覆われていた。

 因幡と但馬西部の神社では、麒麟獅子舞を伝承するところが多い。

 因幡では、江戸時代に鳥取藩主池田家が鳥取東照宮の祭礼に麒麟獅子舞を奉納したことがきっかけとなり、通常の獅子よりも顔の長い麒麟獅子頭を用いた獅子舞が主流となった。

 麒麟獅子舞は、その後因幡から但馬西部にまで広まった。この地方では、獅子舞と言えば麒麟獅子舞である。

雄獅子と雌獅子

 中砂見字大湯棚と上砂見にある大和佐美命神社には、それぞれ一体ずつの麒麟獅子が伝承されている。

 大湯棚の麒麟獅子が雄獅子、上砂見の麒麟獅子が雌獅子とされ、祭礼時には、この二体の麒麟獅子が舞をする。

 この麒麟獅子舞は、江戸時代に池田家の家老に奉公した大湯棚地区の夫婦が、奉公先で権現流の獅子舞を習い覚え、それを伝えたものとされている。

 雌雄の舞とも、正統権現流とも呼ばれている。

大湯棚の麒麟獅子

 特に大湯棚の麒麟獅子は、鼻と口が大きく、男性的な風貌で、獅子としての威厳が感じられることから、麒麟獅子頭の傑作として、鳥取県指定保護文化財となっている。

拝殿

本殿

 中砂見の大和佐美命神社の社殿は、簡素な清々しいものであった。

 中砂見の大和佐美命神社の参拝を終え、隣村の上砂見の大和佐美命神社を訪れた。

上砂見の大和佐美命神社

 上砂見の大和佐美命神社には、軽トラに乗ってきた地元の男性たちが集まって、社殿に上がって何かの祭事の準備をしていた。

 中砂見もそうだったが、上砂見の大和佐美命神社も丘の上にある。

石段

 こちらの大和佐美命神社の本殿は、彫刻がなかなか見事であった。

拝殿

本殿

本殿の彫刻

 この大和佐美命神社の麒麟獅子舞を観れば、きっと霊獣が地上に降り立ったような、神威を感じさせてくれることだろう。

 この鳥取市の奥地の集落に、江戸時代中期から続く麒麟獅子舞が伝承されていることを、貴重なことであると感じる。