風見鶏の館 後編

 赤いカーペットが敷かれた階段を上がり、2階に行った。

階段

階段途中のステンドグラス

階段踊り場から2階を見上げる

 2階はトーマス家のプライベートな空間であり、1階の豪華な造りと比べ、割合簡素に造られている。

 質実剛健で合理的なドイツ人らしい家だ。

2階

 2階北東側は、客用寝室である。簡素なしつらいの2階の部屋の中で、この部屋の壁紙とカーテンは豪華な図柄である。

客用寝室

 19世紀半ばに、イギリス人のウィリアム・モリスが提唱したアーツ&クラフト運動の影響を受け、当時ヨーロッパではこうした部屋づくりが流行ったそうだ。

三面鏡

 部屋の奥にある三面鏡は、大正時代末期に神戸で製造されたものである。桜材で作られ、鏡はドイツ製である。

 右側に銅板で囲まれた火鉢があるのが珍しい。

火鉢部分

 この火鉢の中に炭を入れてコテを温め、髪をカールさせるのに使ったそうだ。

 この三面鏡は、トーマス家で使われていたものではなく。芦屋市民から風見鶏の館に寄贈されたものである。

 2階南東の部屋は、朝食の間と呼ばれている。

朝食の間

 毎朝トーマス一家がここで朝食を摂ったそうだ。

 この部屋は日当たりがよくて暖かく、当時は遠く大阪まで見渡せたという。冬はこの部屋が家族の居間に使われていた。

 2階南側中央の部屋は、子供部屋である。

子供部屋

 子供部屋の広さは実に24畳もある。南側の最も日当たりのいい部屋である。トーマス夫妻がいかに一人娘のエルゼを大切に育てていたかが窺われる。

 2階の南西は、ベランダになっている。

子供部屋からのベランダ入口

ベランダ

ベランダからの眺望

 眺望を楽しむためだけの空間があるというのは贅沢なものだ。

 ベランダの北側は、トーマス夫妻の寝室だったが、今は売店になっている。

寝室

寝室の壁紙

 風見鶏の館は、昭和53年に国指定重要文化財になり、昭和58年から60年の修復工事で、建築当時の姿に戻った。

 この館には、トーマス一家の家族愛が籠っているような気がする。どことなく温かさを感じる洋館である。

 トーマス家がここで生活したのは短い間だったが、20世紀初頭の日本で生活したドイツ人一家の家庭の雰囲気が、館の中に今でも残っているような気がする。