荘厳寺の本堂は、塔頭法音院右脇の苔むした石段を登った先にある。
私は今迄何度かこの寺に足を運んだことがあるが、この石段には来るたびに息を呑む思いをする。
中世からのままではないかと思わせる、寂びた石段だ。石段の脇には、大師堂がある。弘法大師空海が祀られている。
石段を登った先に、本堂が見えてくるが、その手前に鐘楼がある。この鐘楼にかかる梵鐘は、慶安年間(1648~1652年)に、姫路城主本多政勝が寄進したものと言われる。
鐘楼のある場所から見上げると、急な石段の上に本堂が顔を覗かせている。銅板葺きの屋根が、日光に輝いている。
本堂は、慶長十六年(1611年)に再建されたもので、ご本尊は、十一面観世音菩薩である。十一面観世音菩薩は、法道仙人の自作と伝えられ、脇壇には法道仙人の立像が安置されているという。
慶長年間に徳禅上人が再建した本堂だろう。
ところで、荘厳寺では、かつて鬼追い行事が行われていた。疫病などの厄払いのために行われた行事である。
荘厳寺の鬼追い行事は今は行われていないが、鬼の面は今も残されている。
荘厳寺の青大鬼、赤大鬼の面は、姫路市にある兵庫県立歴史博物館に展示されている。箱書きには、明和八年(1771年)の記載がある。
こういう古拙な趣のあるお面はいいものだ。
本堂の近くに、兵庫県重要有形文化財に指定された多宝塔が聳える。
私が史跡巡りで訪れた6つ目の多宝塔である。
この多宝塔は、正徳五年(1715年)に建立されたものである。ご本尊として、釈迦如来坐像が安置されている。多宝塔は、元々は建久年間に源頼朝に仕えた佐々木高綱が建てたと伝わっている。
多宝塔のすぐ下に、宝永五年(1708年)に再建された三社八幡宮がある。山の鎮守の神様を祀ったものだ。
元々は、室町時代に建てられたらしい。覆い屋で覆われ、保護されている。
荘厳寺は、青葉の匂う今の季節もいいが、紅葉の秋に訪れてもいいように思う。