最上稲荷 その6

 旧本殿霊応殿のある場所から、背後の龍王山に登る参道が始まる。

龍王山への参道

 この先は、急な階段が続く。

 龍王山中腹にある八畳岩は、開基報恩大師が本尊最上位経王大菩薩を感得した場所である。

 言わば、最上稲荷の始まりの場所である。

 龍王山こそ、最上稲荷の核心とも言える。

 私は、この参道ではなく、洗心閣別名荒行堂と呼ばれる建物を経由するコースを行った。

洗心閣前の川に架かる橋

 川に架かる赤い橋を越えたところに洗心閣がある。新しい建物であった。

洗心閣

洗心閣内部

 洗心閣の内部には、祭壇のようなものがある。祀られているのは、最上三神であろうか。 

 祭壇の前に僧侶の座があるが、その上に紙垂が垂れている。神仏習合の空間である。

 また、洗心閣の隣には、荒行堂の入口がある。ここでどんな荒行が行われているのか、興味が湧く。

荒行堂の入口

 洗心閣の近くに池があるが、その池には八大龍王尊が祀られている。

 「八大龍王」と刻まれた題目石の背後に小さな祠があり、その背後に池がある。

 池には、八大龍王尊の像が立ってこちらを見つめている。

八大龍王と刻んだ題目石

池に立つ八大龍王尊像

 水は全ての生命の源である。水を司る八大龍王の神威のおかげを、皆が享受しているといってもいいだろう。

 さて、洗心閣から龍王山に向かって歩くと、本滝という滝行をする場所がある。

本滝

 龍の銅像の口から出てくる水に打たれるという仕掛けである。

 滝の側には誦経堂がある。ここで経を唱えてから滝に打たれるか、滝に打たれてから経を唱えるかするのだろう。

誦経堂

誦経堂内部

 誦経堂の看板には、「ご自由にお参りしてご修行下さい」と書いている。最上稲荷の僧侶でなくとも、ここでは修業が出来るらしい。

 脱衣場もあって、確かに誰でも修行出来そうだ。

脱衣場

 ところで滝行というものは、日本にしか存在しない。山岳信仰の中から出てきたもので、滝自体への崇敬から行われるようになった修行法である。

 「古事記」に書いてある禊とも関連があるだろう。

 日本では、古くから清水を神聖なものとして扱ってきた。その神聖な水に浸かることで、心身を清めることが出来ると信じられてきた。

 日本の原初的信仰のベースには、具体的な自然物への崇敬がある。日本の風土の中を生きるだけで、日本的信仰生活を送っていると言える。