亀山八幡宮の参道を海に向かって降りていくと、亀山八幡宮の御旅所でもあり、秋季大祭の舞台ともなる池田の桟敷がある。
秋季大祭を見物する客のために、石積の見学席を何段にも積み重ねた桟敷である。
海に面して鳥居があり、鳥居の奥に石垣を積み重ねた桟敷がある。
秋季大祭では、太鼓台と呼ばれる屋台が桟敷前で練るが、桟敷前の馬場の中央に、その太鼓台を安置する場所と思われる台がある。
台の周囲には、地域名が刻まれた標柱が建っていて、「輪番腰付」と刻まれた標柱もある。
この台の名称なのだろう。
それにしても、池田の桟敷は雄大な建造物である。まるでギリシアの野外演劇場のようだ。
昭和45年に大阪で開催された万国博覧会の「お祭り広場」は、この池田の桟敷をモデルに設計された。
小豆島は、石が豊富に産出される地である。大坂城の石垣もここから多く切り出された。
小豆島には、石積みの桟敷が多数あるが、石材が豊富なのもその原因であろう。
桟敷の間を細い道が通い、階段を上って上の段に行くことが出来る。
上から眺める桟敷の段も興味深い。
最上段からは、眼下の馬場と、池田湾が一望出来る。
石段を降りて馬場に戻ってから桟敷を見上げると、やはり重厚感のある独特の風景である。
亀山八幡宮の秋季大祭には、この桟敷がぎっしり人で埋まり、桟敷の上には即席のテントが設けられる。
このような石積みの桟敷は、小豆島だけでしか見ることが出来ないのだろうか。小豆島独自の文化のように思える。
池田の桟敷は、国指定重要有形民俗文化財である。
桟敷に向かって右手には、小さなお社が並んでいる。
海に向いたお社は、きっと航海や漁に関係する神様を祀っていることだろう。
中央のお社は、彫刻も立派であった。
海に向かって翼を広げたように広がる池田の桟敷は、開放的な空間である。
このような場所で祭事を執行できて、見学できる池田郷の人々を羨ましいと思う。