福知山市猪崎にある三段池公園は、様々なスポーツ施設が集まる公園であるが、公園内や周辺からは、古墳が多数発掘されている。
公園中央にある総合体育館の北側に「古墳の丘」と呼ばれる場所がある。池の奥古墳群の中で最大の5号墳がある場所である。
古墳の丘には、何の案内標識も立っていないので、分かりにくい。
東屋が建つ広場があるが、最近放置されているのか、雑草が生えている。
広場の奥に立ち木に囲まれた円墳がある。これが京都府史跡になっている5号墳である。
5号墳は、高さ5メートル、直径30メートルの円墳だ。いつ築造されたものかはっきり分からないが、6世紀よりは前だとされている。
古墳の周囲を浅い周濠が囲み、その周りに木立が植えられている。
古墳の体育館側に、一段低く掘られたような場所がある。もしかしたら、横穴式石室を盗掘した跡ではないかと思った。
5号墳の北側には、5号墳より小さい2つの円墳がある。3,4号墳である。こちらは、6世紀半ばの築造と言われている。
6~7世紀には、地方の有力者の古墳が山上に築かれることが多かった。
これらの古墳群も、その習慣の現れであろう。
三段池公園の南側にある三段池の南東には、稲葉山古墳群があった。
稲葉山古墳群の中で現存する10号墳は、三段池公園周辺にある古墳群の中で、唯一の前方後円墳である。
10号墳は、全長38メートルで、後円部の方が前方部よりも低いという、珍しい形状の前方後円墳である。
築造は、概ね6世紀前半と見られている。
埋葬施設は後円部にあり、縦約6メートル、幅約3メートルで、底部に礫が敷き詰められていたという。
また、墳丘周囲に円筒埴輪が置かれ、古墳南側のくびれ部分からは、巫女や武人といった人物を象った形象埴輪が出土した。
それにしても、円やかというか、優美な形をした古墳である。
墳形がはっきり認識できる前方後円墳を見ると、なぜか嬉しくなる。
墳丘に登ってみると、古墳を覆うのは芝生だけなので、墳丘の曲線がよく分かる。
本当に美しい古墳だ。
今から約1500年前の、我が国の「建造物」を堪能した。
さて、稲葉山古墳群は、他にも多数の古墳があったようだが、公園の開発に伴って消滅してしまった。
現存するのは、10号墳のみである。
10号墳から東に歩くと、丘の上に東屋があるが、この東屋の下に9号墳があった。
9号墳は、稲葉山古墳群の中では最も古く、5世紀前半に築造されたものだという。
東西20メートル、南北17.5メートルの長方形墳で、2基の埋葬施設があった。
三段池公園の古墳群は、由良川流域に広がる集落の有力者が葬られた古墳群だろう。
遥か昔の由良川流域の農村の風景が思い浮かぶ。