歴史散歩シリーズ

 史跡巡りの最良のガイドブックは何か。それは、山川出版社の「歴史散歩シリーズ」だ。

 男の子ならば、誰しも何かのコレクションに熱中した時代があるはずだ。

 コレクションとは、物のコレクションだけではない。四国八十八か所巡りや西国三十三か所巡り、諸国一の宮巡りなどのように、目的地を決めて一つ一つ、自分にとっての「聖地」を回るのも一種のコレクションと言ってよい。

 私も昔から、愛する我が国の史跡を網羅的に訪ねてみたいと思っていた。過去に神社巡りをしたこともあるし、国宝巡りをしてみたいと思ったこともある。

 文部科学省が公開している、国宝・重要文化財の紹介ホームページを見て、全国の国宝・重要文化財を見てみようかと思ったこともある。

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史跡巡りガイドの定番、歴史散歩シリーズ

 ある時、書店で、山川出版社の歴史散歩シリーズを手に取ってみた。私は、「ああ、これだ」と思った。

 山川出版社は、歴史教科書の老舗である。この歴史散歩シリーズは、約40年前に誕生した。その後、時の経過とともに版を重ね、今や史跡巡りガイド本の定番となっている。

 このシリーズは、47都道府県の各教育委員会が執筆した、各都道府県ごとの史跡巡りのガイドブックである。

 城郭や神社仏閣、歴史的町並み、古墳や石碑、墓、古代の集落跡などの歴史的背景を解説し、史跡に近い駅やバス停の情報も載せている。史跡に関する情報量は、「るるぶ」や「まっぷる」などの旅行情報誌よりも、はるかに多い。

 それだけでなく、これを読むだけで、その地方の歴史の概要を掴むことが出来る。読み物としても優れている。

 それに写真を見て欲しい。ビニールカバーがついている。恐らくこれは、リュックを背負い、汗をかきながら歩く人が持っていても、表紙が痛まないための心遣いだろう。また、リュックサックに入れて、中で他の荷物に揉まれても、本の角が擦れないための工夫だろう。こういうちょっとした気遣いが、ロングセラーの理由なのだと思う。

 とは言え、歴史散歩シリーズには、地元の大半の人すら知らないと思われる、地味な史跡が沢山掲載されている。

 このシリーズに載っている場所全てを、一生の間に訪問するのは不可能であるが、焦らず気負わずに、これをガイドに、史跡巡りをしていきたい。