備中国分寺跡 後編

 国分寺の建物でひときわ目を引くのは、文政四年(1821年)に建設が始まり、弘化元年(1844年)頃に完成した五重塔である。

 私が史跡巡りで訪れた最初の五重塔である。

五重塔

 岡山県下で唯一の五重塔であり、国指定重要文化財となっている。

 塔の総高は約34.3メートルであり、三層までは欅材、四、五層は松材が主体の木造本瓦葺である。

 青銅製の相輪が立っており、塔身部が高くて相輪が短いという特徴がある。

塔の断面図

 塔の中央には、礎石から相輪までを貫く長大な心柱が立っている。

 初層には、この心柱を大日如来に見立て、東に阿閦如来、西に阿弥陀如来、南に宝生如来、北に不空成就如来五智如来像が安置されている。

初層の五智如来

 三重塔や五重塔は、ここに仏がいることを表す仏塔なのである。

 遠くに塔が見えたら、頭を下げるべきだろう。

 塔に近づくと、五重塔の威容に圧倒される気がする。

五重塔

 初層蟇股には、十二支の禽獣の彫刻が施されてる。

初層

卯の彫刻

丑の彫刻

巳の彫刻

 五層目には、塔の建設に尽力した證旭上人の像が安置されているという。

 それにしても、この高さの塔が、今まで落雷による火災や、台風による倒壊に遭わずに、よく無事に現代まで伝わったものだ。

初層

緑の中の五重塔

 備中国分寺五重塔は、吉備路のシンボルのような建物である。吉備路の観光案内の本には、必ずこの五重塔の写真が出て来ると言ってよい。

五重塔

 長い日本の歴史の中では、まだ出来て間がない塔だが、地域のシンボルとなっているこの塔を守っていくのが、我々の大事な務めであろう。