赤和瀬から東に行き、尾根を一つ越えると、中津河沿いの谷間に出る。
中津河の上流にあるのが、岩井滝である。
岩井滝は、因幡、伯耆、美作に跨る三国山の美作側の麓、標高約830メートルの位置にある。
駐車場に車をとめ、駐車場近くの登り口から岩井滝を目指した。登り口から概ね300メートル歩くと滝に到達する。
道の途中、美しい沢や豊かな緑の景色を眺めながら歩くことになる。
雨上がりの後の山の中は、空気が大量の水分を含んでいるかのような、瑞々しい風景であった。
途中、日本の名水100選の一つ、名水岩井がある。
その昔、この地に住んでいた木地師の忠左衛門は、子宝に恵まれなかったので、岩井滝不動に願掛けをした。
すると岩井の水を飲むようにというお告げがあった。
忠左衛門は、21日間岩井の水を飲んで、念願の女児を授かり、養子を迎えて家業の木地挽によって長者になったという。
名水岩井からしばらく歩くと、岩井滝が目の前に現れる。
岩井滝の規模は、高さ約10メートル、幅約6メートルと大きくないが、滝の裏側から流れ落ちる清水を眺めることが出来る裏見の滝である。
中津河の山並みを、通り岩と称する約25キロメートル続く安山岩が連なっている。
その通り岩の安山岩が、途中で突き出て岩屋を形成している。岩井滝はその岩屋の上を流れ落ちているのである。
岩屋の中には、不動明王が祀られていた。
忠左衛門が祈った岩井滝不動である。
私は岩井滝不動に、今後の史跡巡りの無事を祈った。
降雨の後のためか、岩井滝の水量は豊富だった。いい時に訪れたと思った。
私は滝の近くに佇み、暫し静かな時間を過ごした。