玄武洞ミュージアム その1

 玄武洞公園の前にある玄武洞ミュージアムは、地質や岩石に関する資料、豊岡杞柳細工に関する資料、恐竜をはじめとする古生代中生代新生代の生物の化石などを展示する資料館である。

玄武洞ミュージアム

 平成30年にオープンしたようだが、ここが意外と見応えのある資料館であった。

 建物は2階建てだが、1階には地質や岩石に関する資料、豊岡杞柳細工に関する資料が展示してあった。

 今日は、地質と岩石に関する資料を紹介する。

 我々が住む日本列島がある場所は、元々は海の底だった。

 日本列島の最も古い層にあるのは、蛇紋岩である。

蛇紋岩

 海底の更に下にある橄欖岩が、海水と反応してできたのが蛇紋岩であるという。

 但馬最古の岩石は、上の写真の養父市大屋町で見つかった蛇紋岩で、約4.5億年前のものである。

 橄欖岩は、海洋プレートを形成している。地球の表面には、地殻という岩石で出来た層があるが、それが複数のプレートに分かれている。プレートが動くことで、大陸が移動する。これがプレートテクトニクスである。

 かつて、古太平洋側の海洋プレートが、大陸側のプレートの下に潜り込んでいたが、その過程で海洋プレートの表面の岩石が剝ぎ取られ、大陸プレート側に付加されていった。そして、大陸から海に流れ出た土砂と混ざって堆積していった。これを付加体という。

 日本列島は、海底内に堆積した付加体が基になって出来ている。約2億年前には、後の日本列島を形成した付加体は、まだ大陸にくっついていた。

 約8千万年~3千5百万年前に、海洋プレートが潜り込む際に生じたマグマが地底でゆっくり冷え固まって花崗岩になった。

 花崗岩は、他の岩石より比重が軽いので、地底から徐々に浮き上がり、付加体に加わった。

深成花崗岩

 花崗岩は、他の岩石よりも軽いため、時間の経過と共に浮き上がってくる。例えば紀伊半島の山々は、ほとんどが地中から浮き上がってきた花崗岩で出来ている。

 神道修験道では、山上にある巨岩を神仏が宿る磐座として崇拝するが、山上にある巨岩も、たいていが地中から浮き上がってきた花崗岩である。

 花崗岩は、寒暖の差があると伸縮して次第にひびが入り、崩れていく。風化の過程で山頂付近に残った花崗岩の巨石が、磐座と見なされていることが多い。

 真砂土は、花崗岩が崩れて出来たものだし、砂浜の白い砂も、花崗岩が崩れて出来たものである。

 さて、今の日本列島を形成した付加体は、まだ大陸の東端にくっついていたが、約2400万~約1400万年前になると、プレートテクトニクスの影響で大陸から離れて海側に動き始めた。大陸と付加体の間が引き延ばされ、そこに河川や湖が出来た。

 この時代には、大陸と付加体の間の河川や湖などの付近に巨大な象がいた。ステゴロフォドンやその子孫のステゴドンといった象である。

ステゴロフォドンの臼歯の化石(レプリカ)

ステゴドンの化石(レプリカ)

 ステゴロフォドンやステゴドンの化石は、日本各地で見つかっている。

 その後、火山活動の影響で大陸と付加体の間が開き始め、そこに海水が入り込んだ。日本海の誕生である。さらに付加体は隆起し、日本列島になった。

 丹後や但馬の海岸沿いには、この時代の火山活動で噴出した溶岩が固まって出来た安山岩流紋岩などの柱状節理を見ることが出来る。

 兵庫県美方郡香美町香住区にある鎧の袖や但馬松島などは、その典型例である。

鎧の袖

鎧の袖の流紋岩の柱状節理

但馬松島

 日本列島が誕生した後も、今の西日本の大半は海中にあった。今の西日本の陸地を形成したのは、火山活動で噴出した溶岩が主である。

 但馬では、約400万年~約250万年前まで、今の氷ノ山や鉢伏山などが火山として活動していた。

氷ノ山

 約160年前からは、神鍋山や扇ノ山などが噴火した。

 玄武洞玄武岩も、この時代の噴火で流出した溶岩である。

神鍋山

神鍋山の噴火の際に噴出された火山弾

 こうして火山の噴火で噴出された溶岩で、但馬の陸地は出来上がった。

 今の日本人の大半が住んでいる日本の平野部は、河川が山から運んだ土砂が堆積して出来たものである。豊岡平野も円山川が運んだ土砂の堆積で出来た。

 これら平野部は、せいぜいここ10万年程の間に出来たものだろう。

 地球では、約260万年前から氷期間氷期が繰り返されている。氷期の氷河によって、但馬の日本海側のリアス式海岸が出来た。「最近」の氷期が終わった約12,000年前に縄文時代が始まった。我々が知る歴史は、この辺りから始まっている。

 これからも氷期間氷期は100回は繰り返されると言われている。今は気候が温暖な間氷期だから、次は確実に氷期がやって来る。

 今の人類が引き起こした地球温暖化が、氷期の到来を遅らせるかどうかは分からない。

 今日書いたことは、SFのような壮大な話だが、我々が住むこの星の現実に他ならない。