境神社 一宮八幡神社

 今日は古くからの獅子舞を伝承する二つの神社を紹介する。

 一つ目は、竹内流古武道発祥の地から北に行った岡山県久米郡美咲町境にある境神社である。

境神社

神門

 境神社の祭神は、素戔嗚尊である。

 社前には、境神社の大スギと呼ばれる巨木がある。

境神社の大スギ

 古くから、この地域を見守って来た大木である。

 境神社の社殿は、石段を登って行った先の、小高い丘の上にある。

拝殿

 拝殿の蟇股の彫刻は、朝日と松と梅という目出度い図柄である。

拝殿蟇股の彫刻

 境神社では、毎年体育の日に行われる秋の大祭で、獅子舞と宮棒が奉納される。

 優美な獅子舞は、雌型と呼ばれていて、後で紹介する一宮八幡神社の雄型の獅子舞と一対のものとなっている。

境神社獅子舞の獅子頭

 拝殿に獅子頭の写真が掲示されているが、一般的な獅子頭と比べて特異なお顔をしているように見える。

 本殿は、寛永十五年(1637年)に再建されたもので、なかなか古いものである。

 拝殿に、大正5年に移された本殿の写真が掲示されていた。

大正5年撮影の本殿の写真

本殿

 境神社は、小さなお社だが、神寂びた古社という趣で、好感を持った。

 ここからさらに奥地に入り、岡山県久米郡美咲町大垪和(おおはが)西にある一宮八幡神社に赴いた。

一宮八幡神社

神門

拝殿

 一宮八幡神社の祭神は、誉田別(ほんだわけ)命である。

 毎年10月の第2日曜日に行われる秋の大祭で獅子舞が行われる。勇壮な一宮八幡神社の獅子舞は、雄型と呼ばれている。

 一宮八幡神社に伝わる獅子頭は、貞享二年(1685年)の銘があるもので、黒漆で塗られた当時の特徴を残した獅子頭らしい。

社殿全体

本殿

本殿の彫刻

 本殿は、桁行三間の一般的な流造の本殿である。

 彩色されていない簡素な木組みの本殿は、神寂びていいものである。

 一宮八幡神社の境内には、歌舞伎舞台がある。

歌舞伎舞台

 歌舞伎舞台は、江戸時代末期にこの地方で流行したそうであるが、岡山県下に現存するものは数少ないらしい。

 播磨や神戸市北区には、農村歌舞伎舞台が多数残っている。

 明治のころまでは、村の者たちはこういった舞台の前に集まって、農村歌舞伎を鑑賞したことだろう。

 江戸時代の最大の娯楽は芝居だったと思われるが、当初は江戸や大坂、京都などの都市部の住民しか歌舞伎を鑑賞することは出来なかったことだろう。

 江戸時代末期になって、ようやく農村の人達も地元で芝居を鑑賞できる環境になったものと思われる。

歌舞伎舞台から眺めた境内

 獅子舞は、日本で最も数の多い民俗芸能と言われている。

 中国発祥で、奈良時代に日本に伝来し、室町時代から江戸時代にかけて急速に日本中に広まったらしい。

 私の氏神様でも獅子舞が奉納されるが、少子化の波で徐々に日本の山間部から姿を消しつつある。

 境神社や一宮八幡神社の獅子舞のように、長い歴史を持つものには、いつまでも残ってもらいたいものだ。