明治32年(1899年)の条約改正で外国人居留地は廃止されたが、大正から昭和にかけて、旧居留地地域には、ビルが数多く建設された。
震災で打撃を受けたが、今でも旧居留地には、大正から昭和初期に建設されたレトロビルが多数残っている。
そんな中で今日紹介するのは、神戸市中央区海岸通に並んでいる海岸ビルと商船三井ビルディングである。
海岸ビルは、大正7年(1918年)に竣工したビルで、かつて三井物産神戸支店だった建物である。
設計者は、河合浩蔵だ。
阪神淡路大震災で全壊したが、ビルの外壁だけは撤去され保管された。
その後、海岸ビルが建っていた場所に新しいビルが新築されたが、平成10年に新ビルの低層部の周囲に海岸ビルの旧外壁を再建築した。
直線的な幾何学模様を多用した、モダンなビルである。
内部に入ると、エスカレーターがあり、近代的なビルの内部と同様で、外観だけがレトロビルだというのが分る。
内部にはお洒落なお店が入っている。海岸ビルは、現在はシップ神戸海岸ビルという名称で呼ばれていて、オフィスと商業施設が多数入っている。
海岸ビルの東隣には、旧居留地を代表するレトロビルの商船三井ビルディングが建つ。
商船三井ビルディングは、大正11年(1922年)に旧大阪商船神戸支店ビルとして竣工した。
近畿を中心に商業ビルを設計した建築家渡辺節の設計である。
当時としては珍しい7階建ての高層ビルである。
東京の旧丸の内ビルや大坂の旧大阪ビルヂングがなき今となっては、大正時代に建設された大型商業ビルの中では、唯一現存するものだそうである。
商船三井ビルの1階には、ゴルフ用品の店が入っている。約20年前に訪れた時は、西洋のアンティーク家具を置く店が入っていた。
このビルは作りが堅牢だったのか、震災を生き残ったようだ。
旧居留地のビルの中には、海外の高級ブランド店など敷居の高そうな店が入っている。
私のような人間には入るのが躊躇われる店ばかりだ。ビルの外観だけを楽しんだ。
旧居留地を歩いていると、ランボルギーニやマセラッティ、ポルシェといった高級外車がよく通り抜ける。
それにしても、古いビルが、人に高級なものとの結びつきを思わせるのは不思議なことである。
旧居留地は、西洋の文物への憧れを生み出す町としては、今も現役のようだ。