蓮昌寺の参拝を終え、再び西川緑道公園に戻る。
緑道公園のすぐ東側に、白亜の岡山バプテスト教会が建っている。場所は岡山市北区田町1丁目になる。
バプテスト教会は、キリスト教プロテスタントの一教派で、アメリカで広く普及しているらしい。
岡山バプテスト教会が設立されたのは、昭和27年12月のことで、そう古くはない。しかし、美しい尖塔を持った建物である。
私が訪れたのは日曜日だった。教会の入口付近に立つと、中で礼拝が行われているのが分った。
中から聞こえるのは讃美歌だろうか。ここだけ静かな時間が流れているかのようだ。
西川緑道公園に戻り、西川用水沿いを北上する。
野殿橋の袂に句碑が建っている。
戦後、第一次吉田内閣で農林大臣を務め、農地改革を成功させた和田博雄の句碑である。
句碑には、「冬夜の駅 妻一人の 出迎がよし」とある。
和田博雄は、思想的には左派で、日本社会党の党員であった。岡山市にあった旧制第六高等学校を卒業して東京帝国大学に進み、官僚から政治家になった。
衆議院議員としては、岡山から出馬した。
政界の仕事の傍ら、趣味で俳句をしたらしい。この俳句がいいかどうか分からないが、和田の静かな生活上の感懐が出ているように思う。
野殿橋から北上すると、岡山出身の彫刻家岡本錦朋(きんぼう)作の「平和の象」がある。
この像は、岡本が岡山大空襲の惨禍を回想し、世界恒久の平和と郷土永遠の幸福を願って建てた像であるらしい。
ここから北上すると、北村西望作の彫刻作品「夢」がある。
北村西望は、日本人なら誰もが知っている長崎平和公園の平和祈念像の作者である。
この作品は、作者は意図していないだろうが、どことなくヨーロッパ世紀末頽廃芸術の雰囲気があるような気がする。
西川緑道公園は更に北に続いている。私は更に歩いた。この日私は、10キロメートル以上は岡山市街を歩いた。
歩くのは気分がいい。歩くことが出来るというのは、実に幸せなことである。
一歩一歩歩けることの幸せを噛みしめながら、これからも歩いていきたい。