江井崎から南下すると、海に突き出た岩の岬がある。明神崎である。地名で言うと、淡路市明神になる。
明神崎は、白色の奇岩で囲まれた岬だが、その奇岩群の上に西濵神社という神社が建ち、その周囲を自生したイブキが囲んでいる。
明神崎は、かつては島だったが、江戸時代に淡路本島と陸続きになったそうだ。
西濵神社は、仁和四年(888年)に創建されたとされている。
御祭神は、伊弉諾尊、伊弉冉尊である。伊弉諾神宮の西方の浜の宮であるため、西濵大明神と呼ばれた。
かつては社殿が西に向いて建っていたが、帆船が明神崎に差し掛かると、不思議と風が凪いで船足が止まった。
人々は、これを社の向きが正しくないとの神意と判断し、寛文五年(1665年)に社殿を南向きに直した。
社殿は、その後天保二年(1832年)、明治40年(1907年)、昭和48年(1973年)に修築された。
社の周囲には、約40本の野生のイブキが自生している。
明神崎のイブキは、明神港が海運業で栄えていたころに、船乗りが九州から持ち帰って植えたものとも言われている。
幹が白く変色しているのは、海岸に生えていて、海風に曝されているからである。
樹齢は数百年は経過していると言われている。
明神崎は、奇岩で構成された岬で、四囲の眺めは頗るいい。
南を眺めると、淡路の海岸がずっと続いている。この先は鳴門海峡だろう。
西側には小豆島が見える。
岬の周囲は、ごつごつした岩だらけだが、遊歩道が整備されている。
白い岩とイブキの白い幹と緑の葉、青い海と青空。これらの色彩が合わさって独特の景観を生み出している。
途中、人ひとりがようやく通ることが出来る岩の間を抜けた。
岩の間を抜けて、岬の北側に出ると、昨日紹介した江井崎の先端の保養所が見えた。
北側から明神崎を見上げると、岩礁の上にイブキが逞しく生えているのが分る。
明神崎を散策していると、ささやかな展望台があった。
白い木枠で作られた海に突き出た展望台は、「恋人たちの聖地」として紹介されてもおかしくなさそうなロマンチックな味わいであった。
男一人旅の身の上で展望台に入るのが躊躇われた。それでも展望台からの景色は素晴らしかった。
真正面は西になるが、輝く海の向こうに小豆島の島影が見えた。
浄土宗などでは、西方に極楽浄土があるとされているが、それを髣髴とさせる景色である。
周囲を認識できる五感があることを有難く感じた。