慈雲山円城寺

 八浄寺から西へ車を走らせ、山奥の細い道を登っていく。

 淡路市佐野の奥地にある真言宗寺院が、慈雲山円城寺である。

 この寺は桜で有名だが、私が訪れた3月27日には、まだ3月だというのに、八分咲きになっていた。

 境内は桜で覆われ、伽藍が見えないほどである。

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慈雲山円城寺

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 またこの寺は、躑躅でも有名であり、5月になれば今度は躑躅が咲き誇り、全山が仙境のようになるという。

 寺院の裏山にも桜が植えられていて、まばらながら花見客が散策している。寺には全部で約450本の桜が植えられているという。

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寺院の裏山の桜

 円城寺の歴史は、判然としない。昨日紹介した八浄寺の奥の院だと言われている。

 御本尊は、2体の聖観世音菩薩立像である。平安時代の作で、ふくよかな面相と、しなやかな姿態を持つ像であるらしい。この2体の仏像を地元では夫婦観音と呼んでいるそうだ。

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本堂

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 御本尊は本堂に祀られているのだろうが、丁度堂内では法要が行われていて、僧侶の読経の声が聞こえてきた。

 御本尊は、兵庫県指定文化財となっている。秘仏であるが、毎年4月10日の会式で御開帳される。その時は、数多くの参拝客がこの寺を訪れるという。

 本堂の隣には、鎮守の金毘羅大権現が祀られた祠がある。

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金毘羅大権現鳥居

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金毘羅大権現拝殿

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金毘羅大権現本殿

 金毘羅大権現は、元々はインドのガンジス川に棲む鰐を神格化したクンビーラという水神で、仏教に取り入れられて薬師如来を守護する十二神将の筆頭の神様になった。

 役小角が讃岐の象頭山を訪れた時に、クンビーラの神験に遭い、そこに金毘羅大権現を祀ったのが、今の金刀比羅宮の起こりである。

 金毘羅大権現の前には、桜の花がたわわに咲いている。

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金毘羅大権現前の桜

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 年を取ってくると、いつ自分が死ぬか分からないという気持ちになってくる。来年桜を見ることが出来るかな、などと思うようになってくる。円城寺の桜を眺めて、今年も桜を見ることが出来たと思った。

 金毘羅大権現の近くに、古そうな石造五輪塔を祀った場所があった。何か由来があるのだろう。

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石造五輪塔

 本堂の先には、客殿がある。客殿に至る石段の周囲にも桜が咲き誇っていた。

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客殿の周囲の桜

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 客殿は桜雲閣という名称のようだ。客殿の西側と南側に、昭和58年に築かれた庭園、寿楽苑があるらしい。名園として評価が高いらしいが、公開はされておらず、見学することは出来なかった。

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桜雲閣

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 庭園の中には茶亭があるそうだ。桜を眺めながら茶を喫するなど、最高の贅沢であろう。

 桜を見ると気分が晴々する。新しい季節がやってきた、と感じて気分が高揚する。来年の今頃は、どの史跡の桜を眺めていることだろう。