野島断層保存館の南側には、断層が敷地内を走っていた民家が、メモリアルハウスとして保存されている。
下の写真の民家の塀の形を見ればわかるが、建物が建っている敷地の上半分が横にずれてしまっている。
建物の中は、凄まじい揺れに見舞われたことだろう。
野島断層保存館の中ではあれだけ明瞭に段差が残っていた断層も、館の外に出ると写真のように風化して、表面に草が生え、なだらかになっている。すべてを風化させる時の力をここでも感じる。
メモリアルハウスは、中に入って見学することが出来る。
この民家が、活断層の真上で原型を保っているところを見ると、骨組みは鉄筋なのだろう。
建物内には、「地震直後の台所」を再現した展示があった。
この台所は、地震直後の散らかった状態ををそのまま保存しているわけではなく、一度片づけられた台所を利用して、震災直後の状態を再現したものである。
また座敷では、地震前の水平ラインと現在の梁のずれを比較して、家屋の傾きを展示してあった。
住んでいる家が、横に約1.2メートル動くという経験は、想像もつかない。
メモリアルハウスを出て、西側の敷地を見ると、敷地内を走る断層の段差を確認することが出来る。
メモリアルハウスを出て、隣に建つ活断層ラボを見学する。ここには、日本全国の活断層についての展示や、液状化現象についての展示があった。
日本全国の活断層を表示した地図を見ると、日本列島は、いつ疼いてもおかしくない古傷を数多く抱えているように見える。
活断層ラボを出て、震度7の揺れを体験できる震災体験館に入る。
震災体験館では、直下型地震だった阪神・淡路大震災の揺れと、海溝型地震だった東日本大震災の揺れの両方を体験できるが、私が訪れた日は、阪神・淡路大震災の揺れしか再現されていなかった。
固定されたソファや椅子が置かれた架空のリビングに座って、震度7の揺れを体験してみた。
大きな揺れが2度来たが、今まで体感したことのない大きな揺れで、1度目の揺れの時は、もしこの揺れが心の準備も何もないときに来たら、かなりの恐怖と動揺を感じただろうと思った。
揺れている間は、文字通りどうしようもない状態で、「机の下にもぐろう」と考える暇もないのではないかと思う。
見学を終えて、公園に建つセミナーハウスの前に行ってみると、小ぶりながらよく花が咲いている桜の木があった。
地震の展示は恐るべきものだったが、この桜を眺めて少し気持ちが落ち着いた。
北淡震災記念公園には、意外と子供連れの家族が多く訪れていた。子供が多く訪れることを考えると、地震の破壊力の展示だけでなく、震災に際して人々がどれだけ助け合ったかという展示もしたら良いのではないかと思った。
天災は忘れた頃にやってくると言われるが、最近は忘れないうちに天災が訪れているように思う。
人間は傷つきやすい生身の生き物であり、住んでいる環境も無菌状態の管理された安全な場所というわけではない。
人間が生きていく上で、疫病や災害や人間同士の争いに遭遇し、それを乗り越えていかねばならない状況は、いつまで経っても続いていくものと思われる。