海神社

 神戸市垂水区を代表する神社と言えば、海神社である。

 海神社は、JR垂水駅のすぐ近く、神戸市垂水区宮本町にある。

 古くは海(わたつみ)神社と呼ばれたが、最近は海(かい)神社と呼ばれることが多い。名前の通り海の近くに建つ、海の神様を祀った神社である。

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海神社浜大鳥居

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 国道2号線の南側に、高さ12メートルの朱色の浜大鳥居が海に向かって建つ。昭和32年に建てられたものである。この浜大鳥居の近くに垂水漁港がある。漁船からすれば、海上に出た時にこの朱色の鳥居は目印になるだろう。

 国道2号線の北側に社殿が建つ。神功皇后が朝鮮征伐の帰路に、垂水沖合で暴風に遭い船が進まなくなったため、皇后自ら船上で海神の綿津見(わたつみ)三神を祭ったところ、たちまち風雨が止んだことから、この地に社殿を建てたのが、海神社の始まりとされている。 

 垂水から大阪までの大阪湾沿岸には、神功皇后の航海に関連した創建説話のある神社が数多い。

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海神社

 海神社は、平安時代の「延喜式」では名神大社に列せられるなど、古くから朝廷から重きを置かれ、高い社格を誇った。

 大日本帝国時代の社格制度では、明治30年官幣中社に列せられた。

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子獅子が抱き着く狛犬

 鳥居を潜ったところにある狛犬は、砂岩製のためか風化が進んでいるが、子獅子が母獅子に抱き着く珍しい狛犬であった。

 今の海神社の社殿自体は、そう古い建物ではなさそうだ。向拝の波の彫刻が見事だ。

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拝殿

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浪の彫刻

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拝殿の扁額

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拝殿

 海神社の例祭は、毎年10月11、12日に執り行われる。11日にはフトン太鼓の引き回し、12日には御神輿を御座船に乗せ、西は舞子沖から東は神戸港沖まで渡御する。海神様も、広い海の上でお寛ぎになることだろう。

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拝殿から幣殿、本殿

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本殿

 本殿は流造だが、幣殿と接続しており、軍艦のような姿をしている。

 垂水はイカナゴ発祥の地で、漁業が盛んで、航海に縁のある土地である。

 ところで、この海神社の本宮とされている神社が、何故か内陸にかなり入った神戸市垂水区下畑にある。下畑海神社という。

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下畑海神社鳥居

 なぜこんな内陸に海神社の本宮があるのか、由来は分らない。

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下畑海神社社頭

 社頭には、神様に奉納するための相撲の土俵がある。

 拝殿の向拝には、社紋が掲げられている。波間から上る朝日と思われる社紋だ。

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拝殿

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社紋

 社紋からすると、やはり航海と関係のある神社のようだ。ひょっとしたら、垂水の漁船の材料となる木材をこの地から伐り出していたので、ここにも海神を祀ったのではないか、などと色々想像が膨らんでくる。

 下畑海神社の本殿は、コンクリート製の覆屋で覆われている。

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本殿の覆屋

 中の本殿を拝観したいものである。

 日本人は昔から、自然の威力をおそれ敬い、神として崇めてきた。日本人は、人間が自然に翻弄される存在だということを強く認識してきた。

 神社がそこに建っているということには、何がしかのいわれがある。神社がそこにあることを畏れ敬う気持ちは、現代においても必要だと思う。