明石市 本松寺 高家寺

 以前、宮本武蔵が作った庭を持つ善楽寺円珠院を紹介したが、今回紹介する本松寺も、武蔵が作庭した庭を持つ。

 本松寺は、明石市上ノ丸にある。人丸山の西側に建っている。

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本松寺の石段

 本松寺は、日蓮宗の寺院である。慶長元年(1596年)に、秀吉の家臣藤井新右衛門勝の寄進で建てられたらしい。

 本松寺山門の扉には、玉杢の木目が浮き出た欅の一枚板が使われていた。

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本松寺山門

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山門の扉

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浮き出た玉杢

 さて境内に入る。本堂を左に見ながら進むと、庭園の入口に至るが、庭園は残念ながら公開されていなかった。

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本堂

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庭園の入口

 庭園入口の引き戸の右上には、「宮本武蔵作本松寺庭園」と書かれた木札が掛けてあった。
 余談だが、本松寺には、ジャイアント馬場のお墓があるそうだ。
 続いて、明石市太寺(たいでら)にある天台宗の寺院、高家寺を訪れた。
 高家寺のあった場所には、元々太寺という白鳳時代創建の寺院があった。高家寺の境内に、太寺廃寺の塔跡の土壇が残されている。

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太寺廃寺の塔土壇跡

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 土を固めて出来た土壇が、風化せずにこれだけ綺麗に残っているのは珍しい。

 土壇上には、当時の礎石3つが原位置を留めて置かれている。また、中央に発掘された心礎が置かれている。

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土壇上の礎石

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心礎

 心礎の中央の孔は、直径24センチメートル、深さ8センチメートルであり、それほど太い柱を受けていたのではないことが分る。白鳳時代にここに建っていた塔は、小さな塔だったのではないか。

 かつて礎石があったとされる場所には、円形に砂利が埋められて目印とされている。

 高家寺の寺域からは、白鳳時代から江戸時代にかけての瓦が多数発掘されている。

 太寺創建時の軒平瓦が、明石市立文化博物館に展示されている。

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太寺廃寺出土の軒平瓦

 出土した太寺創建時の瓦は、飛鳥の川原寺などと共通の模様で、今まで当ブログで紹介した加西市の繁昌廃寺や、小野市の広渡廃寺とも類似している。

 仏教興隆のため、白鳳時代に朝廷は各地に官寺を建てたが、太寺もその一つだろう。

 太寺廃寺塔跡は、兵庫県指定文化財となっている。

 さて、太寺がどのように荒廃して、その跡地に高家寺が建ったのか、その由来はよく分かっていない。

 高家寺は、室町時代には、既に大きな勢力を持った寺院だったという伝承がある。

 現在の高家寺本堂は、元和年間(1615~1624年)に、明石城主小笠原忠政が建立したと伝えられる。

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高家寺本堂

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 高家寺本堂は、桁行五間、梁間五間の、向拝を持つ寄棟造りの建物である。

 明石市内最古の寺社建築で、側柱が角柱、組み物が舟肘木という簡素な作りである。 

 中世仏堂形式の五間堂としては、兵庫県内唯一の事例であるそうだ。

 高家寺本堂は、兵庫県指定文化財となっている。平成7年の阪神淡路大震災で大きな打撃を受けたが、平成16年に修復された。

 高家寺ご本尊の薬師如来坐像は、明石郡内七薬師仏の一つで、典型的な平安時代後期の様式を示す彫刻であるらしい。こちらも兵庫県指定文化財である。

 この薬師如来坐像は、元々神戸市西区にある国宝の寺、太山寺に祀られていたものだが、神亀年間(715~717年)に漁師が海から引き揚げた網にかかっていた薬師如来像を太山寺に祀ったことから、太寺に譲られたという口伝があるという。
 高家寺は、明石の市街地にある目立たない寺院だが、古くからの伝承を多く伝えている。
 古くから信仰されてきたものを残そうと思う人々の気持ちは、根強いものである。