岩嶺山石峯寺 後編

 石峯寺が江戸時代に幕府や明石藩から手厚く保護されたことは前回に述べたが、境内には、石峯寺御朱印寺領を与えた歴代徳川将軍の尊霊碑が建っている。

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徳川将軍尊霊碑

 さらに境内には、暦応四年(1341年)に建てられた石造五輪塔がある。兵庫県指定文化財である。

 この石造五輪塔は、石峯寺の境内にあるものの中で、恐らく最も古いものである。

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石造五輪塔

 この五つの石で、下から順番に、密教で言うところの地水火風空の五大を現わしている。

 さて、石峯寺の本堂は、正面五間、側面六間の堂々とした建物である。

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本堂

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 向拝の下の彫刻が非常に細かい。

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向拝下の彫刻

 外陣の天井は、折上格天井で、格式の高い造りである。

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外陣の折上格天井

 欄間の彫刻ものびのびとしている。

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欄間の彫刻

 本堂の御本尊は、延命地蔵であるという。法道仙人が安置したものと言われているが、実際はいつの時代のものなのだろうか。

 石峯寺の伽藍の中で、一際大きな存在感を放っているのが、国指定重要文化財の三重塔である。私が史跡巡りで訪れた12番目の三重塔である。

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三重塔

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 この朱塗りの三重塔は、高さ約24.1メートルで、兵庫県下で最大の三重塔であるという。

 建設時期は、室町時代中期と言われている。眺めていると、一緒に天に昇って行けるのではと錯覚してしまうような、天に伸びる優美な塔だ。

 境内には、地蔵菩薩を中心に据えた池があり、蓮の花が咲いていた。

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地蔵菩薩と蓮の花

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 この池の水は黒く濁っている。蓮の花は仏教の教えの象徴とされている。人はこんな濁った池の様な濁世に住んでいても、菩提心を持てばいずれ美しい真実の世界に目覚めることが出来るとされている。

 煩悩にまみれた世界だからこそ、悟りの機縁に満ちていて、人は悟りに導かれるとされているのである。煩悩即菩提というわけだ。

 濁った水に育つ美しい蓮の花は、そんな仏教の教えの象徴になっている。

 汗水たらして働き続け、人に揉まれ、泥まみれになりながら生きていても、どこかに花は咲いているものだ。