ビートルズ

 最近諸事情で史跡巡りが出来ていない。今日も台風で出かけられなかった。

 なので今日も史跡と関係のない記事を書く。私の私生活の柱の一つである音楽について書く。

 音楽、と言っても、専ら聴くだけで、何かの楽器を演奏したり自分で歌ったりするわけではない。

 何を聴くかというと、今や死語に等しい「洋楽ロック」である。それもギターメインの古典的ロックを聴いている。

 ビートルズストーンズキンクスツェッペリン、ディープ・パープル、ジミヘン、クラプトン、アイアン・メイデンAC/DC、ガンズ、オアシス等々。大体これで嗜好が分かると言うものだ。私は、スイフトスポーツで史跡巡りをする間も車内で洋楽ロックを聴いている。これは私にとって至福の時間である。

 この中で、好きなバンドと言うとどれもだが、やはりビートルズは別格である。

 私は、20歳のころにビートルズを聴き始めた。最初は、初期のアルバムを退屈だと思っていたが、「ラバーソウル」や「リボルバー」を聴き始めて、「これは面白いぞ」と思い始めた。音楽については素人なので、何が面白いか言葉にし難いが、一言で書くと、ビートルズの音楽は、「ラフに作っているようで、ものすごく緻密に作ってある」ということである。

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ラバーソウル

 「ラバーソウル」は、私が最も好きなアルバムであるが、その中の「Nowhere Man」は凄く凝ったコーラスで織りなされている。

 ポール・マッカートニーが弾くベースは、ベースラインだけで一つのメロディになっている。「The Word」などは、1曲の中で、曲自体のメロディとベースラインのメロディと、2つのメロディが同時進行している。

 私は英語があまり得意ではなく、どちらかというと苦手だが、ビートルズの歌詞はシンプルで分かり易い。ビートルズの曲は、歌詞を読んで、歌詞の意味を理解しながら聴くと、より楽しめる。

 「ノルウェイの森」の歌詞は、英語が良く分からない私が、唯一「英語って美しい言葉だ」と感じた英語である。

 ジョン・レノンポール・マッカートニーという稀代の音楽家が一つのバンドにいたこと自体が奇跡だ。二人とも単独でもロック史に残る作曲家だが、その二人が共同して曲作りをしていたのだから。

 ビートルズの曲は、今まで数えきれないぐらい何度も聴いているが、聴くたびに新しい発見がある。それもこれも、この二人が、本当にいい曲を後世に残そうとしたからだろう。

 ジョンは生前、女子に嬌声をあげられるような表面上の人気などよりも、「レコードだよ、レコードが大事なんだ」と言ったらしいが、メンバーが精魂込めてレコーディングした曲は、いつまでたっても色褪せないという自信があったのだろう。

 私は、史上最高のロックシンガーは誰かと問われれば、ビートルズ時代のジョンだと答える。ソロ時代よりも、ビートルズ時代の、バンドの中で自分を抑えながら歌っている彼の方がいい。ジョンの枯れた声は、ひりひりする激しさと優しさと哀しさを同時に表現している。

 私は、25歳の時に、仕事のことで悩んでいて、固形物が喉を通らなくなった。栄養を取るために、とりあえず牛乳ばかり飲んでいたが、このままでは衰弱すると思い、深夜に独身寮を抜け出して、1人でファミレスに行ってみた。そこで料理を注文したが、出てきた料理に手をつけることが出来なかった。

 その時に、ふとセカンドアルバム「with the beatles」の2曲目、「All I've Got To Do」が頭の中に浮かんだ。ジョンの優しい哀しい激しい歌声が聞こえて来た。何故か心のつかえが取れて、ゆっくりだが料理を食べることが出来た。

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with the beatles

 当時の私の心に染みたのは、それ以外に漱石の「猫」があるが、当時の私には、漱石ビートルズも「あんた、それでいいよ」と言ってくれているような気がした。

 ビートルズと言えば、ジョンとポールと思われるかも知れないが、ジョージ・ハリスンの「下手うま」なギターも味がある。しかし、サウンド面でビートルズを支えているのは、何といってもリンゴ・スターのドラムだと思う。リンゴ加入前にピート・ベストがドラムを叩いている時の音源を聴いてみたが、「?」と感じる。リンゴのドラムは、私には上手いか下手か分からないが、ビートルズの曲に最もしっくりくるドラムだと思う。リンゴより上手いドラマーがビートルズで叩いたとしても、それでは「ビートルズ」のサウンドにはならなかっただろう。

 ビートルズのアルバムは、傑作揃いだが、彼らの才能が最も表れているのは、「ホワイト・アルバム」だと思う。

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ホワイト・アルバム

 このころには、ビートルズメンバー同士の共同制作は少なくなって、それぞれで曲作りをするようになってきたが、それ故の多様性がある。2枚組30曲の中に、様々な種類の音楽が揃っている。

 音作りはシンプルだが、それ故に彼らの曲の良さが際立って見える。「この1曲」という強い曲はないが、トータルで見て豊饒なアルバムである。

 最近「イエスタデイ」という、ビートルズが存在しなかった世界を描いた映画が作られたが、そんな映画が出来るほど、彼らが世界に与えた影響が多大だったということであろう。

 ビートルズの曲は、これからも世界中の人たちの人生を彩るBGMになるだろう。

 彼らのデビュー曲、「Love me do」は、「愛しておくれよ」という意味だが、彼らの最後のアルバム「Abbey Road」の最後の曲、「THE END」の最後の歌詞はこうである。

  And in the end

       the love you take

       is equal to the love

       you make

 ”そして結局”、君が得る愛は、君が与える愛に等しい”

 キャリア最初の曲と最後の曲の歌詞が照応しているのが面白い。

 ビートルズメンバー4人は、グループ内で仲違いをして解散してしまった。最後の歌詞と異なり、お互いを尊重し合わなかったから解散となったのだろう。

 解散は残念だったが、ジョンが言ったように、彼らが精魂込めて作ったレコードの中の曲は、人類の遺産として後世まで尊重されるだろう。